F.相続・事業承継~試験科目及びその範囲 範囲の細目
相続・事業承継は基礎編18点、応用編40点、実技試験100点とFP1級合格のため、もっとも出題される(配点が多い)科目といえると思います。
もっとも実技試験のPart1は相続だけでなく他の全科目の要素も含まれますが、それを差し引いても、相続・事業承継の重要度が最も高いことには変わりないと思います。
今回も一般社団法人金融財政事情研究会のホームページに記載されている「試験科目及びその範囲 範囲の細目」について自分なりの解説をしていきたいと思います。
そもそも何故、相続・事業承継を学ぶ必要があるのでしょうか?
今の私たちの生活があるのも先人たちの知恵や発明、残してくれた有形・無形の財産によって成り立っています。
もし相続時に富を再配分する仕組みがなければ資産を持っている者は末代まで裕福な暮らしをする一方、貧しい者の子孫はいつまでも貧しい暮らしを強いられます。
また、事業承継の仕組みがなければ、社会に有益な仕事が従事者の死により失われるのであれば、それは社会にとっての損失につながりかねません。
そうならないために事業承継を応援する仕組みが日本にはあるのだと思います。
1.贈与と法律
1.贈与の意義
2.贈与契約
3.贈与の時期
4.贈与契約の取消し
5.贈与の種類
(1) 単純贈与
(2) 定期贈与、負担付贈与、死因贈与
6.民法の規定
(1) 親族の範囲
(2) 婚姻、離婚
(3) 扶養義務者
2.贈与と税金
1.贈与税の納税義務者
(1) 無制限納税義務者
(2) 制限納税義務者
(3) 特定納税義務者
贈与税は相続税法に規程されています。
相続税を収める方にとっては高額になり納税に苦労することもあるため、納税の負担を軽減するために事前に計画的に贈与を行うための施策があり、この内容を正しく理解し、伝えることもFPの役割となると思います。
特例贈与財産・一般贈与財産の計算問題がたまに出題されるけど、チャンス問題なことが多いので計算方法をマスターしておくことをお勧めします。
2.贈与税の課税財産
(1) 本来の贈与財産
(2) みなし贈与財産
(3) 財産の名義変更の取扱い
(4) 土地の使用貸借の取扱い
(5) 無利子の金銭貸与の取扱い
(6) 離婚時の財産分与の取扱い
贈与については基礎編を解くこともいいですが、応用編や実技試験の過去問の事例を見て、どういった場面で知識が必要になるのか確認することが有効だと思います。
3.贈与税の非課税財産
(1) 法人からの贈与財産
(2) 扶養義務者からの生活費、教育費
(3) 公益事業用財産
(4) 社交上必要と認められる香典、贈答、見舞い、祝物等
(5) 相続開始年の贈与
(6) 特定贈与信託の信託受益権
(7) 公職選挙法上の選挙における選挙運動のための贈与を受けた財産
(8) 心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
(9) 特定公益信託から交付される金品
4.贈与税の計算
(1) 贈与税の基礎控除
(2) 贈与税額の計算
(3) 贈与税の配偶者控除
(4) 相続時精算課税制度
(5) 各種贈与の特例
相続時精算課税制度、各種贈与の特例(住宅資金、教育資金)は頻出の問題です。基礎編では細かい知識を問われ、応用編では特例を使った際の計算結果を反映させることが求められます。
5.贈与税の計算における外国税額控除
6.贈与税の申告と納付
(1) 贈与税の申告方法と申告期限
(2) 贈与税の納付方法と納期限
(3) 延納
イ 延納の適用要件、ロ 担保、延納期間、利子税、ハ 延納の申請期限
7.贈与税の連帯納付義務
8.農地等の納税猶予の特例に
9.納期限の延長
10.災害等の場合の納税猶予
11.災害減免法による贈与税の免除
3.相続と法律
1.民法の規定
(1) 相続の開始
(2) 相続人の範囲と順位
(3) 欠格と廃除
(4) 実子(嫡出、認知)
(5) 養子(普通養子、特別養子)
(6) 成年後見制度
2.相続における胎児の取扱い
3.相続分
(1) 法定相続分
(2) 代襲相続分
(3) 指定相続分
(4) 特別受益者の相続分
(5) 寄与分
基礎編、応用編、実技試験とも家系図が記載される問題が出題されることがあります。
法定相続分は配偶者と子のパターンであれば配偶者2分の1、子2分の1を当分とシンプルなものですが、
相続人が配偶者と親のパターン、配偶者と兄弟姉妹のパターン、前妻との間の子があるパターン、養子縁組をしているパターンなど様々なので、それぞれの法定相続分がわかるようにしておく必要があります。
4.遺産分割、財産分割の方法
(1) 遺産分割の方法(指定分割、協議分割、調停分割、審判分割)
(2) 財産分割の方法(現物分割、換価分割、代償分割)
5.遺産分割の流れ及び留意点
6.遺産分割協議書
7.相続人の不存在、特別縁故者への分与
8.相続の承認と放棄
(1) 単純承認と限定承認
(2) 相続の放棄
9.遺言
(1) 遺言の方式、要件
(2) 遺言の効力
(3) 遺言の執行
(4) 遺言の撤回
(5) 遺留分(遺留分権利者とその遺留分)
(6) 遺留分侵害額の請求、遺留分の放棄
遺言書は実際に残される方がどれくらいいるのかわかりませんが、相続の手続きをする際には絶大な効力を持つものです。
基礎編、応用編、実技試験でもまんべんなく出題されます。
4.相続と税金
1.相続税の納税義務者
(1) 無制限納税義務者
(2) 制限納税義務者
(3) 特定納税義務者
被相続人・相続人が国内にいる人ばかりとは限りません。一方が海外に在住していたり、そもそも外国籍を取得していたりすることもあり、その場合の相続税がかかるルールが異なります。
この問題も基礎編で出題されると混乱しますが、整理して紹介しているサイトもありますので確認しておくことをお勧めします。
2.相続税の課税財産
(1) 本来の相続財産
(2) みなし相続財産
(3) 相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産
(4) 相続時精算課税制度に係る贈与によって取得した財産
3.相続税の非課税財産
4.債務控除
(1) 無制限納税義務者の場合
(2) 制限納税義務者の場合
(3) 特定納税義務者の場合
(4) 債務控除の具体的範囲
(5) 葬式費用の具体的範囲
債務控除とは亡くなった方(被相続人)の財産から差し引くことができるもの、借入金、未払金、葬儀の費用などです。
よく出題されるものとして、お墓や仏壇などは「祭祀財産」にあたるので債務控除の対象とはならない。という点です。
5.相続税の計算
(1) 遺産に係る基礎控除額の計算
イ 相続放棄があった場合、ロ 養子の数の制限、ハ 養子でも実子とみなされる場合
(2) 課税遺産総額
(3) 相続税の総額の計算
(4) 各相続人等の相続税額
(5) 相続税額の2割加算
(6) 配偶者の税額軽減
(7) 贈与税額控除
(8) 未成年者控除
(9) 障害者控除
(10) 相次相続控除
よく出題されるものとして以下の3点を紹介します。
(6)配偶者の税額軽減は1億6,000万円と法定相続分のいずれか多い方まで税金がかかりません。
(8)未成年者控除は(18歳-現在の年齢)×10万円が控除
(9)障害者控除は(85歳-現在の年齢)×10万円が控除 ※特別障害者の場合20万円
6.相続税の計算における外国税額控除
7.相続税の申告と納付
(1) 相続税の申告方法と申告期限
(2) 相続税の納付方法と納期限
(3) 延納
イ 延納の適用要件、ロ 担保、延納期間、利子税、ハ 延納の申請期限
(4) 物納
イ 物納の適用要件、ロ 物納財産、収納価額、利子税、ハ 物納の撤回
(5) 納付方法の変更
8.相続税の連帯納付義務
9.農地等の納税猶予の特例
10.災害等の場合の納税猶予
11.災害減免法による相続税の免除
5.相続財産の評価
1.財産評価の原則(不動産以外)
2.動産の評価
3.無体財産権の評価
4.ゴルフ会員権の評価
5.果樹、立竹木の評価
6.金融資産の評価
(1) 預貯金の評価
(2) 公社債の評価
(3) 生命保険契約に関する権利の評価
(4) 証券投資信託、貸付信託の評価
(5) その他の金融資産の評価
7.株式の評価
(1) 上場株式
(2) 気配相場等のある株式
(3) 取引相場のない株式
イ 会社規模の判定
ロ 評価方式の区分
ハ 評価の方式
① 類似業種比準方式、② 純資産価額方式、③ 配当還元方式、④ 併用方式
ニ 特定の評価会社
① 株式保有特定会社、② 土地保有特定会社、③ 開業後3年未満の会社等
④ 比準要素数1の会社、⑤ 開業前・休業中または清算中の会社
類似業種批准方式は応用編で計算問題が出題されるのが恒例ですが、基礎編でもたまに出題されることがありますし、実技試験のM&Aや相続をする際の会社の評価額の算定に用いられることもあります。
私は基礎編で類似業種批准法が出たら、応用編は小規模宅地の特例だとヤマをはって昼の休憩時間を過ごしていました。
8.新株引受権、株式の引受けによる権利、新株無償交付期待権、配当期待権の評価
9.出資の評価
(1) 合名会社、合資会社、有限会社等及び協同組合
(2) 医療法人
医療法人の評価については実技試験でたまに出題されます。
現在は経過措置型医療法人(持ち分あり)は開設できず、新設される医療法人は基金拠出型医療法人(持ち分なし)ということや、その違いについて口頭で説明できるようになっておくことをお勧めします。
これについて過去に記事を書いているのでよかったら見てください。
6.相続財産の評価(不動産)
1.宅地の評価
(1) 評価単位
(2) 評価の方式(路線価方式、倍率方式)
(3) 不整形地補正、無道路地、がけ地等
2. 宅地の評価
(1) 間口狭小補正
(2) 奥行長大補正
3.私道の評価
4.宅地の上に存する権利の評価
(1) 借地権
(2) 貸宅地
(3) 貸家建付地
(4) 貸家建付借地権
(5) 定期借地権等
(6) 定期借地権の目的となっている宅地
(7) 使用貸借による土地
(8) 無償返還届のある場合の土地評価
5.宅地の上に存する権利の評価
(1) 転貸借地権
(2) 転借借地権
6.農地の評価
(1) 純農地
(2) 中間農地
(3) 市街化周辺農地
(4) 市街化農地
7.生産緑地の評価
8.農地の上に存する権利
(1) 地上権
(2) 永小作権
(3) 耕作権
9.山林、原野、牧場・池沼、雑種地の評価
10.建物の評価
(1) 自用家屋
(2) 貸家
(3) 借家権
(4) 構築物
(5) 建築中の建物
11.負担付贈与及び個人間売買の場合の評価
12.小規模宅地等の評価減の特例
13.配偶者(短期)居住権
相続・事業承継の学習をしているのに、不動産の知識が必要なのかと思われるかもしれませんが、日本人の多くは財産を不動産やそれに付随する権利で有していることがあります。
これは現金化が難しく、分割が困難な場合に、共有することも多く、後に争いの種になったりもします。
被相続人が元気な内に、円満な相続をしておくことが大切だと思います。
7.不動産の相続対策
1.相続税評価額と通常の取引価額との関係
2.移転による対策
(1) 贈与の活用
(2) 贈与税の配偶者控除の活用
(3) 住宅取得等資金の贈与の特例の活用
(4) 売却、交換の活用
3.課税価格対策
(1) 不動産の購入
(2) 不動産の有効活用
(3) 貸家建付地による評価減
(4) 定期借地権の活用
(5) 小規模宅地等の評価減の特例の活用
小規模宅地の特例は、類似業種批准法と並んで応用編の計算問題が受験生を悩ませる問題です。
過去問を数回、投稿していますので、よろしければ見てください。
また、近年タワマン課税が実技試験で出題されることが多くなっています。知らない方にとってはピンとこない内容かもしれませんが、FPとして知っておくべき知識だと思います。
タワマン課税についても過去に記事にしていますので、よろしければ見てください。
4.自然発生借地権の活用による課税価格対策
5.納税対策
(1) 延納による納税対策
(2) 物納による納税対策
(3) 売却、交換による納税対策
6.遺産分割対策
(1) 遺言書の作成
(2) 分割容易資産への変換
(3) 代償分割
遺言書の種類には公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
自筆証書遺言の場合、自筆証書遺言保管制度が併せて問われることが多いです。
8.相続と保険の活用
1.生命保険の基本的な仕組み等
2.相続対策における生命保険の活用
(1) 遺産分割対策
(2) 相続税の軽減対策
(3) 納税対策
(4) 二次相続対策
多くの方にとって相続は二度あります。わかりやすい例でいえば父が亡くなった後、母が亡くなるようなパターンです。
意識しなければならないのは一次相続よりも二次相続の方が相続税が多くなることが多いということです。
これは法定相続人が減るということと、配偶者が受けられる特例が受けられなくなることが多いためです。
9.事業承継対策
1.事業承継の問題点
2.事業承継対策の流れ
個人版・法人版事業承継税制について特例措置・一般措置の要件を確認してどの部分を問われても答えられる準備が必要です。
これも基礎編から実技試験までどの角度から狙われる可能性があります。
3. 贈与、譲渡、従業員持株会制度、会社による自社株買取りによる相続財産の減少対策
4.自社株の移転による相続財産の減少対策
(1) 中小企業投資育成会社の利用
(2) 株式の相互持合い、資本政策(増資、減資、合併、利益償却等)
5.類似業種比準方式による自社株評価における対策
(1) 会社規模の調整
(2) 類似業種比準価額
イ 配当金額の引下げ策、ロ 利益金額の引下げ策、ハ 純資産価額の引下げ策
実技試験ではM&Aを含む事業評価の際の株価引下げという点で出題されることが多いです。
6.類似業種比準方式による自社株評価
7. 純資産価額方式による自社株評価における不動産の取得・有効活用による対策
8.純資産価額方式による自社株評価
(1) 生命保険の活用
(2) 役員退職金の活用
9.特定の評価会社の自社株評価額対策
土地保有会社(大会社70%以上、中会社90%以上)、株式保有特定会社(株式の保有割合50%以上)を相続した場合の評価方法について、学習し、必要であれば土地特外し、株特外しなどを提案することも可能です。
10.納税資金対策
(1) 役員退職金の活用
(2) 役員保険の活用
役員退職金の支給は法人税(経費として計上)、所得税(退職所得としての2分の1の分離課税)という点で納税資金対策と考えることができます。
11.株式公開と資本政策
株式公開は事業者としては自社の商品・サービスを世間に広めるための資金調達というのが主たる目的だと思います。
これを投資家視点で見れば、エンジェル税制の活用などが出題されると考えます。
12.株式の売却・営業譲渡等(M&A)
13.遺留分に関する民法の特例
固定合意、除外合意、付随合意
14.非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度
10.事業と経営
1.法人成りを含めた会社設立
2.株式公開
3.M&A
M&Aについては実技試験で毎回出題されるテーマです。
株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割など手法について口頭で説明できるようにしておくことをお勧めします。
4.企業再編
5.清算
6. 会社法
7.会計制度の最近の動向
11.相続・事業承継の最新の動向
2024年4月1日から相続登記が義務化されたこと。
生前贈与の加算期間の延長(3年→7年)や相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が認められたこと。
直系尊属の住宅資金贈与が60歳未満でも適用可能になったこと。など注意が必要です。

