相続の手順
人の死は突然やってきます。天寿をまっとうする場合もありますが相続・事業承継の分野(実技試験Part1)で、出題されるケースは、相続税が課される資産家の死、個人事業主の死、会社経営者(代表取締役)の死が取り上げられることが多いです。
厳密にいえば、その死を想定して備えられる手を事前に打つための方策というのが正しいかもしれません。
相続を意識した出題例
一般社団法人金融財政事情研究会の実技試験では主人公の親族が亡くなった際にどうするかという問題がよく出題されます。
実際に親族の逝去による出題例(相続した不動産の扱い等)もありますが、相続が発生した際に親族が困らないように事前にできることを準備しておきたいという趣旨の出題がほとんどです。
また実際に相続により取得した不動産の扱いなどが問われる設例も多くあります。
2020年からの実技試験で登場人物の親族が逝去した出題を見てみました。私が気が付いたものだけで20の設例がありました。
FP実技試験を突破しようとすれば、逝去された方の親族に対して適切なアドバイスをするスキルが必要になります。
前提ですが、正しい知識を伝えることも必要ですが、親族を亡くして気持ちが沈んでいる親族の気持ちによりそうことが必要です。
これは専門家という以前に人間として求められることと言っていいでしょう。
以下で親族の逝去に際して誰でも必要になるA.一般的な相続手順を述べ、次にFP実技試験で問われることが多い、B.個人事業主の相続手順、C.代表取締役の相続手順について記したいと思います。
A.一般的な相続手順
出所:朝日新聞社運営のポータルサイト「相続会議」を参考にして作成しております。
この中からFP実技試験で問われそうな論点をつるさん、かめさんのコメント欄で記載しております。
1.死亡後から初七日まで
(1)死亡診断書・死体検案書の受け取り
(2)死亡届の提出・火葬許可証の受け取り
(3)訃報の連絡
(4)葬儀社へ連絡、打ち合わせ
(5)葬儀の手続き、初七日

家庭によっては被相続人が現預金のすべてを持っていて、葬儀代もままならないっていうケースもあるんじゃないかな

現在は遺産分割前でも「預貯金の払戻制度」があって150万円または法定相続分の3分の1の低い方を引き出せるようになっているよ
たまに基礎編で計算問題が出たりするから要注意だね
2. 葬儀後の公的手続き
(1)年金受給停止の手続き(10日または14日以内)
(2)健康保険資格喪失の届出(5日または14日以内)
(3)介護保険資格喪失の届出(14日以内)
(4)住民票の世帯主変更の届出(14日以内)
(5)雇用保険受給資格者証の返還(1カ月以内)
(6)国民年金の死亡一時金請求(2年以内)
(7)埋葬料の請求(2年以内)
(8)葬祭費の請求(2年以内)
(9)高額医療費の還付申請(2年以内)
(10)遺族年金の請求(5年以内)
(11)故人の未支給年金の請求(5年以内)

市区町村や年金事務所で健康保険証や介護保険、年金停止の手続きはすると思うけど、その際に必要な手続きを聞きながらすると思うけど、全てを網羅しているかどうかわからないよね

死亡一時金、埋葬料、葬祭料は基礎編でよく金額が問われるし遺族年金は応用編の計算問題で出題されることもあるね
3. 税金関係の手続き
(1)所得税の準確定申告・納税(4カ月以内)
(2)固定資産税の納税・現所有者申告
(3)相続税の申告・納税(10カ月以内)

準確定申告の4ヶ月以内と相続税の10ヶ月以内は頻出だね

固定資産税の納税・現所有者申告も実技試験で考えさせられることが多い論点だよ
4. 相続手続き
(1)相続人調査
(2)相続財産調査
(3)遺言書を探す
(4)遺言書の検認
(5)相続放棄、限定承認の検討と手続き(3カ月以内)
(6)遺産分割協議
(7)相続税の計算、申告・納付
(8)相続登記(不動産の名義変更)
(9)銀行の預貯金払い戻し、名義変更
(10)株式の名義変更
(11)自動車の売却、名義変更、処分(廃車)

FP実技試験では相続人、相続財産の調査が終わった結果からの出題だけど、実際には相続財産の調査に手間がかかるんだろうね
またFP試験では遺言書の問題が頻出だね、遺産分割はもめないように遺言書を残しておくことは有効だね

相続税の計算問題が応用編で頻出だけど、出題されるのはあくまで法定相続分であって、実際に相続する人と、相続税を払う人というのは別ということにも注意が必要だね
また、(10)株式の名義変更だけど投資用の株式を保有している場合だと思うけど、自分で会社を経営している人であれば類似業種批准法の計算が必要になったりするね
5.その他の手続き
(1)クレジットカードの利用停止手続き
(2)運転免許証の返納
(3)パスポートの失効手続き
(4)団体信用生命保険の請求手続き
(5)生命保険金の受け取り(3年以内)
(6)公共料金の名義変更
(7)携帯電話やインターネットの解約
(8)サブスクリプション型サービスの名義変更・契約停止

契約しているものは本人以外が解約するのはなにかと手間がかかるんだよね
余命は誰にもわからないけど、遺族が困らないようにできることから整理しておくべきかもね

生命保険が法定相続人×500万円が非課税になることは頻出だね
法定相続人×500万円が非課税は死亡退職金にも適用されるので要注意だね
6.優先順位
(1)相続放棄、限定承認(3カ月以内)
(2)所得税の準確定申告・納税(4カ月以内)
(3)相続税の申告・納付(10カ月以内)
(4)不動産の相続登記(3年以内)

不動産の相続登記については話題になってたもんね
準確定申告、相続税の納税については暗記必須だね

不動産の相続登記については1カ月以内に表題登記の申請をする必要があるのにも注意が必要だね
またFP試験で頻出の小規模宅地の特例や生前贈与の計算も相続税申告の際に一緒に計算する必要があるよ
相談内容まとめ
| 出題年月日 | 相談内容 | |||
| 2020年10月4日① | 父の遺産を母に相続させるための手続き | |||
| 2022年2月6日② | 2分の1づつ相続した自宅・賃貸駐車場の分割 | |||
| 2022年2月13日② | 「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」を提出した土地の相続における手続き | |||
| 2022年6月5日② | 相続した2つの土地のいずれかを売却する際の手続き | |||
| 2022年9月24日① | 自筆証書遺言の内容と異なる分割をするための手続き | |||
| 2024年2月17日② | 兄弟4人で相続した土地を長男の死期が近づいて、他の兄弟に再分配する方法について | |||
| 2024年2月18日① | 自筆証書遺言の内容と異なる分割をするための手続き | |||
| 2024年9月21日① | 兄の財産をすべて相続したAさんの相続手続き | |||
| 2024年9月22日② | 母から相続した土地の売却について | |||
| 2025年6月15日① | 父の不動産を相続した母の急逝により兄妹による相続 | |||
| 2026年2月14日① | 8階建てマンションの相続手続きスケジュールについて | |||
B.個人事業主の相続手順
個人事業主の場合、亡くなった方の能力に依存したものとなりますので、死亡と同時に相続人は廃業の届出を行う必要があります。
事務所に従業員がいて、引き続き同一事業を行う場合は、後継者が改めて開業をすることになります。
不動産賃貸業、税理士、司法書士、社会保険労務士など一定の顧客がいる場合、継続してさービスが受けられるよう後継者を育成することもあると思いますが、担当する方が変わるということは散見されるケースです。
また、残された遺族、顧客が困らないように法人化をすすめるパターンも多く出題されます。
法定の相続
(1)死亡届
(2)廃業届・・・税務署、死亡日から1カ月以内
(3)事業廃止届・・・消費税法、事由発生後すみやかに
(4)給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
(5)所得税関係・消費税関係の書類提出
(6)準確定申告・・・4カ月以内
(7)借金や債務が多い場合・・・限定承認を検討
(8)相続人が事業を引き継ぐ場合
(9)個人版事業承継税制の検討
相談内容まとめ
以下に相談内容をまとめてみました。Part1の問題は①、Part2の問題は②を日付の後に記しています。
| 出題年月日 | 相談内容 | |||
| 2021年2月7日① | 妻の相続手続きと不動産賃貸業の法人化 | |||
| 2021年6月5日① | 母の普通養子となっていた妻の相続手続き | |||
| 2021年10月10日① | 遺言書の取り扱いと法定相続情報証明制度 | |||
| 2025年6月8日① | 不動産を活用した相続対策をしようとしていた父の急逝と後を追った母の急逝 | |||
C.代表取締役の相続手順
法定の相続
個人事業主と違う点は法人はGoing Concernであること。経営者が亡くなっても事業は無くならないため、事業継続のための手続きを行わなければなりません。
先ずは残された取締役が3人以上いる場合は、速やかに取締役会を開催し代表取締役の選任を行う必要があります。
後任の代表取締役が親族で株式を相続すればいいのですが、親族以外の方が代表に選ばれた場合、株式は親族が相続し、代表取締役が親族外というケースも考えられます。
(1)代表取締役の選任
(2)登記
(3)会社印鑑の登録・変更
(4)銀行口座・取引先・許認可の変更
(5)社会保険・税務手続き
相談内容まとめ
以下に相談内容をまとめてみました。Part1の問題は①、Part2の問題は②を日付の後に記しています。
| 出題年月日 | 相談内容 | |||
| 2020年2月9日① | 代表取締役社長が急逝した際の「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」活用について | |||
| 2023年9月24日① | 代表取締役社長が急逝した際の相続手続きと公平な遺産分配 | |||
| 2024年6月8日① | 事業を承継する長男と次男が納得する相続財産の分配 | |||
| 2025年9月28日① | 代表取締役社長が急逝した際の事業承継と相続税支払いと弟が納得する遺産の分配 | |||
代表取締役の相続の場合、ほとんどのケースで事業承継税制の知識が問われます。
法人の場合、相続税が多額になり、事業の継続が難しくなることを避けるための施策だと思います。
ただし、事業承継税制は手続きが煩雑で、かつ一度使用すると必然的に次の事業承継にも使用しないと困るケースも多く、躊躇される経営者も多いと思います。
しかし、事業承継税制の特例、金庫株を利用した遺産分割、小規模宅地の特例の活用など、事業を行っている人には相続税を軽減するための施策は準備されているので、困ったときには一人で悩まずに専門家に相談することをお勧めします。
3月6日はFP1級学科試験の合格発表です。
1月試験で合格の手応えをつかんでいる方は6月の実技試験に向けて過去問をひたすら読み傾向をつかんで、自分なりの解き方(問題用紙にメモするトレーニング)をされると思います。
残念ながら不合格の方は5月試験に向けて、再度、学習をされると思います。
どちらの方にとっても役立つよう情報提供につとめたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
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